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ザクッ、ザクザクッ。
足元に落とされたあさりの殻が踏まれる音。
その音が天ぷらを揚げる音よりも大きく響く頃、この天ぷら専門店の一日は終わる。
おおよそ午前九時。
世間とは正反対の時間帯で、市場で働く人々の胃袋を支えるのは津本千鶴子(つもと・ちずこ)さんと2人の息子、そして娘さんの一家。
お母さんによれば「主人が魚屋で働いてたこともあったから」と、堺魚市場で手に入れられる素材を使った天ぷら専門店は市場の一角で気負わずスタートした。
注文はそれぞれの客が伝票に書き込んで渡す、ごく庶民的なスタイル。
とはいえ、昔も今も変わらず注文が通ってから目の前でカラリと軽く揚げられる天ぷらは値段をはるかに上回る満足感だ。
てんこ盛りの大根おろしが入った少し甘めの天つゆでいただけば、十品十五品ほどはペロリと食べられてしまうサクサク感。
それでいて三千円もあればおつりがくるとなれば、評判にならない訳がない。
そしてもうひとつの看板が、「一キロで二杯とちょっとしかとられへん」とお母さんが密かに嘆くボリュームたっぷりのあさりの味噌汁。
食べ終わって床に落とされた貝殻が足元の音の正体だ。
天ぷらと味噌汁。
このふたつだけでもうすぐ四半世紀。


それぞれ別の仕事をしていた二人の息子も「ええ素材をがっと仕入れて、がっと売り切る。
その威勢よさが気に入ってね、ちょっと手伝ったら止められへん」と家族揃っての切り盛りになって、ますます勢いはついた。
今では関西一円から駆けつける常連客もできて、深夜一時開店という営業時間にもかかわらず開店前の行列は必至である。
その『大吉』に転機が訪れたのは、何を隠そうこの〈なんばこめじるし〉騒動。
二店舗目の展開となるその試みに、当初反対していた千鶴子さんが下した決断は「こっちはこのまま夜中の営業で、向こうは昼。
兄弟ふたりでダブルヘッダーするなら出店してもいい」だった。
一見ハードに思える条件のその訳はこうだ。
「これまでのお客さんも大事、新しいお客さんも大事」。
切り盛りの主役となる繁徳(しげのり)さん・啓之(けいし)さんの二人も、自分達のスタイルをわかっているからこそ、迷わずうなずいた。
堺魚市場の深夜の名店が昼のなんばに…、ファン急増は決定的だ。
| 天ぷら 大吉 |
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| 電話 | : | 06-6644-2958 |
| 営業時間 | : | 昼11:00~14:00(LOなし) |
| 定休日 | : | 毎週月曜日 ※祝日の場合は翌日 1月1~6日休、2月第1月火連休、5月第2月火連休、8月定休以外に盆休み3日間、11月第3月火連休 |
| ※営業時間、定休日につきましては、都合により変更となる場合がございます。 | ||